カーモデルの研ぎ出し、鏡面仕上げ
カーモデルやバイク模型等の塗装面に、鏡面のような艶を出す「研ぎ出し」。
研ぎ出しすると、特にブラック色など暗い色は非常にキレイに仕上がるので、カーモデルやバイク模型ではチャレンジしてみる価値は有りです。
このページでは、「研ぎ出し」のやり方を紹介していきたいと思います!
研ぎ出しとは?
左の写真はデカールを貼り終わった状態ですけど、塗装面とデカールの段差が目立ってるし、塗装面も微妙な凹凸があってイマイチ艶が出てません・・。
これを、右の写真のようにデカールと塗装面の段差を消し、塗装面に鏡のような艶を出してあげるのが「研ぎ出し」です。
研ぎ出しの行程を図で説明すると、図1が模型にデカールを貼った状態で、デカールの厚みが目立ってしまってます。
そこで、図2のように上からクリアーを塗装して、乾燥したら図3のようにペーパーでクリアー層のみを削って表面を均一にしてやると、光の反射が均一になってキレイな鏡面になってくれます。
一見、難しそうに感じるかも知れないですけど、下地を出さないように気を付けておけば、そこまで難しいという事でもないと思います。
研ぎ出しは今までいくつかの方法を試してきましたけど、
1.クリアー塗装 → 2.ペーパーがけ → 3.バフレックスで水研ぎ → 4.コンパウンドで艶出し
の行程で進むのが最も手間がかからず、キレイに仕上げられるように思うので、今回はこの行程での研ぎ出しを紹介してみたいと思います!
1.クリアー吹き
使用するクリアー
研ぎ出しに使うクリアーは、「ラッカー系塗料」または「ウレタン塗料」のどちらかです。
水性アクリルは塗膜が弱いので研ぎ出しには向いてなく、エナメル系塗料は塗膜が柔らかすぎて完全に無理です。
個人的には、ラッカー系塗料の場合は実車用の「ソフト99ボデーペン クリアー」を使っています。
ボデーペンクリアーは乾燥時間が短く、乾燥後の塗膜も強いので研ぎ出しに向いてると思います。一度空き瓶に移してエアブラシで塗装してます。
模型用だと、クレオスの「GX100 スーパークリアーⅢ」やガイアノーツの「Exクリアー」などが向いてるみたいです。
ただ、スーパークリアーは下地の塗料が溶けて、ムラになった事が何度かあるので個人的には使ってません。「Exクリアー」も同じ感じの塗料だと思うんですけど、他にこう言ったことは聞かないので、なんか塗り方がおかしいのかも (p_-)
ウレタンクリアーの場合は、フィニッシャーズの「GP1」、もしくは東邦化研工業の「エンジンウレタン」を使ってますが、「GP1」の方がキレイで深みのある艶を出しやすいように思います。
「エンジンウレタン」はちょっと塗膜が柔らかいのか、小傷がつきやすい気がするんですよね。。特にブラック色など傷が目立ちやすい色の場合は、「GP1」を使ってます。
GP1はちょっと高いんですけど、気持ちよくスカッと抜ける透明感ある艶が得られます。
ラッカークリアー、ウレタンクリアーのどちらを使っても、研ぎ出し工程は同じです。今回はラッカークリアーを使って研ぎ出ししてみます。
砂吹き
左の写真はデカールを貼り終わった状態。
この上からクリアーを吹き付けていくわけですが、ラッカー・ウレタンどちらを使う場合でも、まずは最初にラッカー系クリアーを薄く乾かしながら何度か吹き付けていきます。
砂吹きという塗装方法なんですけど、これを行う理由は「デカールのヒビ割れ防止」と「デカールの密着性を高める」の2つ。
1つ目の「デカールのひび割れ防止」は、デカールの上にラッカークリアーを塗装すると、デカールを侵してヒビが入ることがあるんです。塗装から3~6ヶ月と、時間が経ってからヒビ割れる事もあるのでちょっとやっかいなんですよね。。
そこで特に最初は薄く、パーツとハンドピースの距離を離し気味にして、塗料がパーツに付くときには半乾きになってるぐらいの感じで、クリアーを吹き付けてラッカー塗料の膜を作ってやります。
そうすると、上からクリアー塗料を厚塗りしていっても、デカールへのダメージを最小限に抑えられ、ひび割れを防止することが出来ます。
2つめの「デカールの定着を上げる」は、ラッカークリアーはデカールを溶かしてしまうわけですけど、逆にあえて極軽くデカールを溶かす事でデカールの密着具合を高めてやることが出来ます。これでシルバリングも直ったりしますからね。
ウレタンの場合はデカールを侵しにくいですけど、いきなり塗るとデカールが浮いてきたり、シワになったりする場合があので、ウレタンを吹く場合でも最初にラッカークリアー砂吹きした後、ウレタンを吹くとトラブルもなくなると思います。
それでは、早速吹きつけていってみます。
まず最初は砂吹きから。ハンドピースとパーツとの距離を離し気味にして(15~20cmぐらい)、薄く吹き付けたら10分程乾かして、また吹き付けては乾かしてを3~5回ほど繰り返して、デカール保護の為の層を作っていきます。
最初は薄く、そして回を重ねる毎に吹きつけ量を増やしてます。写真右はある程度吹き付けた状態。塗装面がけっこうガサガサになりますけど大丈夫です。
クリアーの厚吹き
ある程度大丈夫そうかなと思える程度度吹いたら(この辺は適当です)、後は厚めにラッカー系クリアーを塗り重ねていきます。
このときは、パーツとハンドピースとの距離を近め(5cmぐらい)にして、塗料が垂れる直前の状態に吹き付けていってます。
使ってるクリアーは、ここでもソフト99「ボデーペンクリアー」です。クレオスの「Mr.カラーうすめ液」か、速乾性の「ラピッドうすめ液」でちょっと薄めて吹きつけてます。薄めずにそのまま吹いても良いと思います。この辺は好みで。
1回ウェット状態になったら、その部分は基本的に塗らずに全体をウェット状態になるよう塗装していってます。これを3回ほど繰り返してますが、1回塗る毎に乾燥時間を半日ほど取ってます。
ウレタンの場合は、フィニッシャーズのGP1の原液を、2~3回塗りしてます。デカールがない模型は2回、レースマシンなど全面にデカールが貼ってあるようなモデルは3回塗りを基本にしてます。
写真右は吹きつけ終わった状態。クリアー塗装が終わったら、このまま少なくとも1週間程乾燥させておきます。出来れば2~3週間乾燥させるとほぼ完全に乾燥させることが出来ます。
乾燥がイマイチだと、鏡面仕上げにしても時間が経過すると塗料が微妙に引けて、艶が落ちて来てしまいます。なので、出来れば1週間よりも2~3週間と、長めに乾燥させておく方がより確実です。
2.ペーパーがけでデカールの段差を消す
クリアーを十分に乾燥させたら、ペーパーでデカールの段差や塗膜の細かな凹凸を削って平面にしていきましょう。
写真左は軽くペーパーを当てた状態ですけど、まだデカールとの段差や塗膜の塗り肌が消えていないので、写真右のように完全に平らになるまでペーパーを当てていきましょう。
個人的には、だいたい1200番のペーパーで段差を消してますけど、みかん肌状態が酷いときは、1000番を使うときもあります。
1000番を使うような場合でも、1000番で全ての段差を取ってしまわず、軽く取ったら1200番へ移行して仕上げてます。1000番で仕上げてしまうと傷が残ってしまうので、少なくとも1200番で仕上げるようにしてます。
1500番で仕上げられるなら、1500番で仕上げておくのが理想ですけど、とりあえず1200番で仕上げておけば大丈夫です。
個人的にはペーパーには水は付けず、空研ぎで使ってます。水研ぎの方が良く削れますけど、水でどれだけ削ったか見にくくなるので、こまめにタオルなどで拭いて作業したりするのが面倒なんですよね。水研ぎでも問題無いので、この辺は好みで。
ペーパーの当て方
ペーパーは平面は普通に当てても(写真左)問題無いんですけど、問題は端や角の部分です。角は気を付けておかないと、すぐに下地が出してしまいます・・
個人的にはパーツの端や角部分はペーパーを2つ折りにして、下側を少し湾曲させるように持ち(写真中)、それを斜めに動かすような感じで平面を出していってます(写真右)。
こうすると、角の部分も下地を出しにくいかな、と言う感じがしてます。ただ、下地処理の段階で同じようにペーパーを当てて平面を出しておかないと下地が出てしまう可能性高いので、下地処理の段階でちゃんと平面を出しておく必要があります。
細い平面や湾曲して凹んでるような所はペーパーを細く折り曲げて使ったり、スポンジヤスリを使ってます。
特に曲面はスポンジヤスリが非常に便利で、簡単にキレイな曲面を出すことが出来ます(写真右)。曲面を普通のペーパーで磨くと滑らかな曲面が出にくいので、スポンジヤスリを使った事がない場合は一度試してみられると良いと思います。
奥まった段差はペーパーを曲げて磨いたり(写真左)、弾力性のある新しいペーパーの角で磨いたり(写真中)、二つ折りにして強度を出して磨いたり(写真右)して、デカールの段差や塗装面の塗り肌を消して行きましょう。
3.バフレックスで水研ぎ
完全にデカールの段差や塗り肌を解消できたら、次はバフレックスでの水研ぎに移ります。
バフレックスは実車用の非常に目の細かいフィルム状のペーパーで、緑(2000番)、青(2500番)、黒(3000番)など、いくつか種類があります。
仮に2000番のペーパーで磨いてからコンパウドで艶出ししても、2000番のペーパーキズを取るのはかなり難しいんですけど、最終的にバフレックス(黒)で丁寧に磨いておけば、コンパウンドでの艶出し作業がかなりく簡単で楽になります。
バフレックスは裏にシールが付いているので、適当な大きさにカットして、ホームセンターに売ってる3~5mm厚のスポンジをカットしたものに貼り付けて、使ってます。
バフレックスは空研ぎでも使えますけど、水研ぎの方が目詰まりしにくく、かなり長持ちして使えるので、水につけながら使ってます。
塗膜を1200番のペーパーで仕上げていた場合は、バフレックス(緑)を一通り当てた後、バフレックス(黒)で仕上げます。1500番のペーパーで仕上げてた場合は、最初からバフレックス(黒)を当てても、ペーパー傷はキレイに消えてくれる感じです。
4.コンパウンドで艶出し
最後はコンパウンドでの艶出し。コンパウンドはタミヤの荒目、細目、仕上げ目の3種類を使ってます。
専用クロスも発売されていて、丁度コンパウンドの番手(キャップの色)と同じに色分けされて便利なので、コンパウンドとセットで使ってます。
適量を付けて磨き、コンパウンドのクリームがなくなったらまた付けて磨いて、と数回繰り返していきます。
荒目(赤いキャップ) → 細目(青いキャップ) → 仕上げ目(白いキャップ)と順を追って進めば、特に苦労することもなく艶がでてくれるはず。
荒目で磨いた後はまだ曇ったような状態ですが、細目で磨き終わればかなりキレイな艶が出てくれますよ。ホワイトやシルバー等、あまりキズが目立たないような色の場合は、細目で終わっても良いぐらいです。
入り組んだ所などは綿棒を使うと、磨きやすいと思います。布だけだと磨いたつもりでも磨けてなかったりするので、全ての箇所を確実に磨いておきましょう。特に荒目は磨き残しがないよう、細部まで確実に磨いておきます。
それと荒目から細目、細目から仕上げ目とコンパウンドの種類を変える時は、前の工程で使ったコンパウドがが混ざらないよう、水で洗い流しておいた方が良いです(写真右)。残ってると艶に影響が出て来てしまいますので。
歯ブラシなどを使って、奥まった部分やスジ彫り部、ビス穴に詰まったコンパウンドもキレイに取り除いておきましょう。
仕上げ目まで磨き終わり、パーツについたコンパウンドを中性洗剤を付けた歯ブラシなどで落としてやれば、研ぎ出しは終了です。
タミヤの仕上げ目までで十分艶は出ますけど、ブラック等暗い色の場合で微細なキズが目立つ場合は、さらにハセガワのセラミックコンパウンドで磨いておくとほぼ完璧にキズが消え、鏡面になります。
ハセガワのセラミックコンパウンドは番手でいうと10000~12000番辺りで、超微細な磨きキズも消すことができるので完璧な鏡面を得ることが出来ますよ。
これで、研ぎ出し・鏡面仕上げは終了です!